目次
結論
株式会社ALLFORCESは2026年8月、自社が運営する6つのドメイン(ai-media.co.jp・ai-media.online・shindan.ai-media.co.jp・wakeari.ai-media.co.jp・studel.ai-media.co.jp・legaltrack.jp)と、配信先のnote.comアカウントを対象に、生成AI検索から一次情報として見つけられ、正確に引用される状態を作る取り組みを実施した。目的に向けて技術基盤を整える過程で、自社のコンテンツ運用そのものに複数の問題が見つかった。もっとも重篤だったのは、note.com配信記事30本が、Web検索を無効化した状態のAIに「事例」として書かせたために、実在しない店名・人物・導入日付を含む創作記事になっていたことだった。ほかにも、本文を変えず更新日だけを書き換える鮮度偽装、実在企業が業種・規模・地域の組合せで特定できてしまう否定的推測を含む記事13本、構造化データ(JSON-LD)が壊れていた記事17本、主キーのコロン1文字が原因でクローラーに見えていなかった補助金詳細ページが見つかった。note.com側の43本を是正し、自社ブログの一般論記事のうち90日間のトラフィック実績がゼロの1,892本を削除した。技術的な土台は整えたが、本稿執筆時点で、生活者が実際に抱く自然な質問に対して自社が生成AIの回答に出典として現れた例はまだゼロである。
出発点
きっかけは単純だった。ChatGPTやPerplexityで検索する人が増え、検索結果ではなく生成AIの回答の中に出典として現れなければ、そもそも存在しないのと同じになる。ALLFORCESは複数のSaaS(補助金検索の「カンタン補助金」、不動産DD支援の「訳あり物件どうする?」、自己認識測定の「HIDDEN VALUE」、日本語学校向け学生管理の「Studel」など)を運営しており、これらが実務者の一次情報源として生成AI検索から引用される状態を作りたいと考えた。
作業を始めるにあたり、まず自社サイト群の現状を棚卸しした。ここで見つかったのは、当初想定していた「クロールされるための技術的な不備」だけではなかった。
棚卸しで見えてきたもの
技術基盤(robots.txt・canonical・構造化データ・sitemap)を点検する過程で、公開済みコンテンツそのものの問題が次々に見つかった。
| チャネル | 問題 | 規模 | 対応 |
|---|---|---|---|
| note.com(@ai_compass_media) | Web検索を無効化した状態のAIに「〇〇社ではこうした」という例示形式で書かせたため、実在しない店名・人物・直接引用・導入日付を伴う記事が創作されていた。最も重篤な例は、架空の居酒屋「魚心」店長を名乗る人物の導入談だった | 30本 | 29本を下書きに戻し非公開化(残り1本は元から公開一覧に存在せず) |
| note.com(@ai_compass_media) | 実在企業が業種・規模・地域の組合せで実質的に特定できる形で、確認の取れていない否定的な推測(「〇〇の可能性がある」)を書いていた | 13本 | 全13本の本文を是正 |
| ai-media.co.jp(自社ブログ) | 本文をまったく変えず、更新日(last_modified_at)だけをスクリプトで書き換える自動処理が動いていた。見かけ上「更新されている」ように見せているだけで、中身は古いままだった | 該当パイプライン単位で発見 | 該当パイプラインを無効化 |
| ai-media.co.jp(自社ブログ) | FAQ構造化データ(FAQPage JSON-LD)を生成する処理で改行がエスケープされておらず、JSON-LDがパース不能になっていた | 17記事(全3,530ページ・11,833ブロックを全数検証して発見) | 全件修復 |
| ai-media.online(カンタン補助金) | 補助金の主キーに含まれるコロン1文字を、nginxとsitemap生成の正規表現がURLとして受け付けず拒否していた。結果として、総数966件のうち中身のある詳細ページとしてbotに見えていたのは71件のみで、残る895件相当がクローラーから見て「存在しない」のと同じ状態だった | 966件中71件のみ可視 | 正規表現を修正し761件が可視化 |
note.com側の問題(架空事例・実在企業の特定可能な推測)は、いずれも生成過程そのものに起因していた。架空事例の記事は、Web接続のないプロセスに「事例」を書かせるという生成方法自体が原因であり、実在企業の特定可能な推測は、匿名化したつもりの記述でも業種・規模・地域を組み合わせれば絞り込めてしまうという設計ミスだった。どちらも、公開前のチェックが機能していなかったことを意味する。
何を直したか
note.com配信の記事は、上記の棚卸しに基づき計43本(本文修正13本・非公開化30本)を是正した。これは自社ブログとは別のチャネルでの問題であり、以下の自社ブログの整理とは対象が異なる。
自社ブログ(ai-media.co.jp)側では、上記の技術的な問題を修復したのに加えて、一般論記事(業界動向の解説などトラフィック実績を伴わない大量生成記事)の棚卸しを別途行った。対象は2,623本で、判定の結果、残す731本(GA4セッション実績のあるもの・URL衝突回避のため残すもの・検索表示実績のあるもの・一次データ系の記事など)と、削除する1,892本に分けた。削除の基準は単純にひとつだけ用意した。削除対象1,892本の直近90日間のセッション実績の合計がゼロであること。 この条件を機械的に確認してから実行したため、削除によって失うトラフィックは理論上ゼロである。実行後、sitemapの掲載URLは2,546件から1,341件に減った。
訂正の公開
技術的な修復や記事の削除だけでなく、公開済みの分析結果に誤りが見つかったときも、隠さずに訂正して公開している。
一例が、公示地価と取引事例を突合した価格比のレポートである。初版の集計は、取引事例データの「種類」(宅地(土地)/宅地(土地と建物)/中古マンション等/農地/林地)と「地域」(住宅地/商業地/工業地)でフィルタせずに市区町村単位で集計してしまい、価格比の中央値を1.13と算出していた。この集計方法の不備を発見し、「種類=宅地(土地)」かつ「地域=住宅地」に限定する二重フィルタを追加して再集計したところ、中央値は約0.90に変わった。1.13から0.90への変化は、単なる数値の微修正ではなく、「取引事例が公示地価を平均で上回る」という初版の結論から「取引事例は公示地価をやや下回る」という逆方向の結論への変化だった。訂正の経緯は、当該記事内に訂正履歴として全文残している。
現在地と、やめる基準
ここまでの棚卸し・修復・削除・訂正は、生成AI検索から見つけられ、正確に引用される状態を作るための前提条件を整える作業であり、AI検索での掲載・引用・推薦そのものを保証するものではない。実際、本稿執筆時点の測定では、生活者・事業者が実際に抱きそうな自然な質問(14問中12問、自社サービス名を含まない)に対して、ChatGPT型のWeb検索・Google検索・Gemini・Perplexityのいずれでも、自社URLが出典・関連情報として現れた例はまだゼロである。唯一出現したのは、社名を直接尋ねるブランド指名質問への回答のみで、これは「知っているかどうか」を聞かれた場合の応答にすぎず、悩みの解決策として選ばれたことにはならない。この測定の詳しい方法と結果は、新しく始めた連載「AI可視性の定点観測」の第0回にすべて公開している。
この取り組みには、あらかじめ期限つきの評価基準を置いている。3か月後(2026年11月13日)の時点で、一次データ記事群と統計ページがGoogle・Bingにインデックスされていない、または「カンタン補助金」というブランド名の検索で自社が1位にならない場合、基盤そのものの失敗とみなして打ち切る。6か月後(2027年2月13日)の時点で、14問の測定質問のうち1問でも2か月連続で出典に出現しなければ、それ以降はAI検索対策目的の工数をゼロにする。12か月経っても案件相談が1件も発生しなければ、取り組み全体を終了する。基準の全文は連載第0回で公開している。
同じ棚卸しをするためのチェックリスト
自社のコンテンツを棚卸しする際、以下は最低限確認する価値があると考えている。
- AIに記事を生成させる場合、Web検索を有効にしたか。無効な状態で「事例」の体裁を書かせていないか
- 「更新日」だけを書き換えて、本文の中身は変えていない記事がないか
- 匿名化・一般化したつもりの事例が、業種・規模・地域などの組合せで実在の相手に逆算できないか
- 構造化データ(JSON-LD)が、改行や特殊文字のエスケープ漏れでパース不能になっていないか。ツールでの全数検証をしているか
- URLの主キーに使われる文字(コロンなどの記号)を、サーバーやsitemap生成の正規表現が拒否していないか
- トラフィック実績のない記事をどう扱うか、機械的で検証可能な基準(例: 90日間セッションゼロ)を決めているか
まとめ
AIに引用される会社になろうとして自社サイト群を棚卸しした結果、見つかったのは技術的な不備だけでなく、自社のコンテンツ運用そのものが抱えていた問題(架空事例・鮮度偽装・実在企業の特定可能な推測・構造化データの破損・URLの不可視化)だった。note.com記事43本を是正し、自社ブログの一般論記事のうち90日間トラフィック実績ゼロの1,892本を削除し、誤りが見つかった分析は訂正履歴つきで公開している。これらは前提条件を整える作業であり、本稿執筆時点でAI引用の実績はまだゼロである。この先の測定結果は、出ても出なくても連載「AI可視性の定点観測」で毎月公開する。
出典: 本記事の数値はいずれも、ALLFORCESが2026年8月13日から16日にかけて実施した自社サイト群の技術監査・コンテンツ棚卸しの内部記録に基づく実測値であり、本稿執筆時点のものである。