この記事で分かること/分からないこと
- 分かること: 固有名らしき語をどう抜き出し、どこまで正規化して照合しているか
- 分かること: 正規化の範囲を広げること/狭めることのトレードオフ
- 分からないこと: 同義語・略語まで含めた汎用的な固有名寄せの方法
- 分からないこと: 日本語以外の言語での固有名照合の扱い
固有名はなぜ数値より難しいのか
数値は表記のパターンが限られているのに対し、固有名(科目名や対象名)は同じ対象でも書き方が何通りにもなり得る。全角・半角、送り仮名の有無、略称と正式名称の違いなど、表記ゆれの幅が数値よりはるかに大きい。自社実装(実体: services/verifier/src/grounding-gate.ts)では、固有名らしき語を「〜学/論/基礎/入門/演習/実験/科学/経済」で終わる語というパターンで抜き出し、根拠集合と照合している。
正規化はどこまでやっているか
実装が行っている正規化は、小文字化と、句読点・括弧・記号(%を含む)の除去にとどまる。全角・半角の統一や、同義語・略語の吸収までは行っていない。つまり、同じ対象を指していても書き方が正規化の範囲を超えて異なっていれば、一致とは判定されない。逆に、正規化後の文字列が根拠集合のテキストに部分文字列として含まれてさえいれば一致と判定されるため、たまたま短い語が別の語の一部に重なって、無関係な対象同士が一致してしまう可能性もゼロではない。
正規化を広げると何が起きるか
正規化の範囲を広げれば、表記ゆれによる見逃し(本来一致するはずが一致と判定されない)は減る。しかし、正規化を広げるほど、本来別の対象を指す語同士が一致してしまう誤検出のリスクも増える。自社実装が正規化の範囲を記号除去と小文字化という狭い範囲にとどめているのは、この両側のリスクをどちらもゼロにはできないという前提のもとで、判定基準を単純に保ち、挙動を予測しやすくする選択だと読める。
固有名の取り違えが起きた実測
実測で観測された失敗モードには、別カテゴリの情報を混ぜてしまうケース(1件)、既知の情報を未知の対象にまで広げて断定してしまうケース(1件)、複数の対象を含む質問に対して一方だけを取り上げて断定してしまうケース(1件)が含まれていた(出所: services/verifier/out/univ-demo.report.json、確認日2026-09-06)。いずれも1件ずつであり、固有名の取り違えという型が十分に検査し尽くされているとは言えない件数である。
よくある質問
Q1. 固有名の照合はどんな正規化をしているのか
小文字化と、句読点・括弧・記号(%を含む)の除去にとどまる。全角・半角の統一や同義語・略語の吸収までは行っていない。
Q2. 正規化を広げれば固有名の照合精度は上がるのか
一方では表記ゆれによる見逃しが減るが、もう一方では無関係な対象同士を誤って一致させるリスクが増える。自社実装は判定基準を単純に保つ側を選んでいる。
Q3. 固有名の取り違えはどれくらい観測されているのか
別カテゴリの情報を混ぜる、未知の対象へ断定を広げる、複数対象のうち一方だけを取り上げるという型がそれぞれ1件ずつ観測されている(出所: out/univ-demo.report.json、確認日2026-09-06)。件数は少なく、十分に検査し尽くされたとは言えない。
Q4. 部分文字列の一致による誤検出は起きうるのか
起こりうる。正規化後の文字列が根拠集合に部分文字列として含まれていれば一致と判定される仕組みのため、短い語が別の語の一部と偶然重なるケースは理論上排除されていない。
固有名の照合が抱える見逃しの一部は、数値・単位という別種のトークンで補われている。その仕組みは数値・単位の照合の記事で扱っている。こうした照合を新しい対象に適用する前の運用は公開前検査の記事にまとめている。幻覚率という指標自体の測り方は幻覚率の測り方の記事を参照してほしい。RAGのハルシネーション対策について相談したい方は、お問い合わせから編集部までご連絡いただきたい。
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