この記事で分かること・分からないこと
- 分かること: ビルド時費用と実行時費用が、発生タイミングも変数も異なる別の予算であること
- 分かること: 自社実装の実測値(ビルド時≈¥1,500/テナント、実行時≈¥0〜1/会話・実測0.12円/session)
- 分からないこと: この構造が全てのRAG用途・全ての規模で成立するかどうか
別の変数で動く二つの費用
RAGの費用を一つの数字で語ろうとすると見誤りやすい。自社実装では費用の発生タイミングが二つに分かれている。ビルド時費用はテナント追加や原本更新のたびに発生する一回性の費用で、実行時費用は会話が発生するたびに継続的に発生する費用である。前者はテナント数や更新頻度に、後者は会話数に比例するという、動く変数が違う値である。実測では、ビルド時(生成+盲検)の費用は約¥1,500/テナントで一回限りの費用として記録され、実行時(確定配信・LLM呼び出し0)の費用は約¥0〜1/会話、実測値は0.12円/sessionである(出所: docs/STORAGE_AND_BILLING.md、確認日2026-09-06)。単位も発生頻度も異なるため、単純に足し合わせて「RAGの費用」と一本化すべきではない。
実行時費用が会話数に比例しない理由と、LLMを呼ぶ設計との違い
実行時に触るのは索引(D1)だけという構成が背景にある。確定配信の経路ではLLM呼び出しを行わず、ビルド時にあらかじめ生成・検証を終えた結果を索引から引くだけで応答を返す(出所: docs/STORAGE_AND_BILLING.md、確認日2026-09-06)。会話が増えても増分でLLMが呼ばれないため、実行時費用は会話数に単純比例しない。これに対し、応答のたびにLLMを呼び出して生成する設計では、会話が発生するたびにLLM呼び出しが発生し、実行時費用は会話数に比例して積み上がる。ビルド時に費用を前払いして実行時をほぼゼロに近づける構成と、実行時に都度LLMを呼ぶ構成とでは、同じ「RAGの運用費用」でも増える条件がまったく違う。会話数が伸びる用途ほど、この違いは予算計画に直接関わる。
ビルド時費用が繰り返し発生する条件
ビルド時費用は一回限りとはいえ、原本データが更新されればビルドをやり直す必要が生じる。自社実装は差分再生成でこの再発生を抑える構成を取っている(出所: docs/STORAGE_AND_BILLING.md、確認日2026-09-06)。全件を作り直すか差分だけで済ませるかで、ビルド時費用がどれだけ繰り返し発生するかが変わる。この差分再生成が何を減らすかは埋め込み生成の費用と再生成の条件の記事で扱う。
よくある質問
Q1. ビルド時費用と実行時費用は合算して管理してよいですか?
推奨できない。ビルド時費用はテナント追加や原本更新のたびに発生する一回性の費用、実行時費用は会話のたびに発生する経常費用であり、動く変数が異なる。合算するとどちらの構造を改善すべきかが見えなくなる。
Q2. 実行時費用が会話数に比例しないのはなぜですか?
実行時に触るのが索引だけで、LLM呼び出しを行わない確定配信の経路を持つためである。ビルド時にあらかじめ生成・検証を終えているため、会話が増えてもその都度LLMが呼ばれない(出所: docs/STORAGE_AND_BILLING.md、確認日2026-09-06)。
Q3. 実行時にLLMを呼ぶ設計とは何が違いますか?
応答のたびにLLMを呼び出す設計では、実行時費用が会話数に比例して積み上がる。ビルド時に前払いして実行時をほぼゼロに近づける構成とは、費用が増える条件そのものが異なる。
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